かつて一軒家に住んでいる人が多かったため、故人をしのぶ仏壇の扱いに困ることはありませんでした。
しかし、マンションやアパートに住んでいる人が多くなってきているなど、住宅事情が変化してきていることから、位牌を閉じて仏壇を処分する「仏壇じまい」が増えてきていることはご存知でしょうか。
本記事では、仏壇じまいをするうえで知っておきたい、位牌・仏壇の処分方法や閉眼供養に関する情報を解説します。
遺族トラブルに発展しないためにも、本記事の情報を参考にして、適切に仏壇じまいしてみてはいかがでしょうか。
仏壇じまいとは
「仏壇じまい」とは、仏壇を処分・手放すことを意味します。
仏壇に安置されているご先祖の霊位やご本尊を正式に供養・お祀りしたうえで、仏壇を処分するなど、単なる「片付け」ではなく、宗教的・精神的な意味を持つことが多いです。
仏壇じまいを決断する理由は、以下のように生活スタイルの変化や後継者問題が起因しています。
- 子どもや後継者がいないため
- 引っ越しや住居の縮小(マンションなど)
- 介護施設などへの入居
- 宗教的な考え方の変化(無宗教・別宗派へ)
仏壇じまいの方法を4ステップで解説
仏壇じまいには適切な手順があり、単なる遺品整理とは違う性質を有しています。
親族とのトラブルを避けるためにも、事前に正しい手順を把握しておき、スムーズに仏壇じまいを進めることが大切です。
ここでは、仏壇じまいの方法を4ステップで解説します。
閉眼供養や位牌の概要も解説しているので、初めて仏壇じまいする人はチェックしてみてはいかがでしょうか。
1.親族に連絡する
仏壇じまいは家族・親族にとって大切な節目でもあります。
勝手に処分すると後のトラブルにつながることもあるため、親族から事前に相談・了承を得ることが大切です。
仏壇じまいの理由や背景を丁寧に説明するだけでなく、兄弟・親戚など関係の深い親族の場合は対面で説明することも考慮しましょう。
必要があれば供養の場に招待することも視野に入れておくと、日程調整など事前に段取りを組みやすいです。
2.閉眼供養を実施する
「閉眼供養(へいがんくよう)」は、仏壇・位牌・ご本尊などに宿っている「魂」を抜くための儀式です。
仏壇や位牌には、ご先祖の霊や仏様の魂が宿っていると考えられており、勝手に処分や移動をしてしまうのは「魂を軽んじる行為」とされ、避けるべきことだといわれています。
仏壇には「魂」が宿っているとされるため、処分前にお坊さんに来てもらい、閉眼供養を実施します。
菩提寺や宗派の僧侶に依頼し、位牌・ご本尊・仏具も一緒に供養してもらいましょう。
菩提寺がある場合は、事前の相談なしに勝手に処分してしまうと、トラブルに発展する場合もあるので注意しましょう。
閉眼供養の主な流れは以下のとおりです。
- 菩提寺または宗派の僧侶に依頼
- 供養の日程を調整
- 自宅で僧侶に読経してもらい、閉眼を行う
- お布施を渡す(相場:1万〜5万円程度)
3.仏壇の整理
閉眼供養が済んだら、仏壇の中身を整理・仕分けをします。
仏壇には、土地の権利書や通帳・印鑑などの大事な書類が入っていることも多いです。
誤って仏壇と一緒に処分しないように、処分前に整理することが重要です。
整理するものとしては、以下のものがあります。
- 数珠、過去帳、お守りなど:保管か再供養する場合が多い
- おりん、ろうそく立て、香炉、仏壇の引き出しの中の私物など:処分対象とする場合が多い
- 写真や手紙など思い出の品:気持ちの整理がつくようであれば、お焚き上げ等で供養する
4.位牌や仏壇を処分する
供養と整理が済んだら、位牌や仏壇を処分します。
位牌の処分方法は以下のとおりです。
- お寺に預けて供養してもらう(永代供養など)
- 仏具店や専門業者に依頼する
- 合同供養・お焚き上げに出す
仏壇の処分方法は以下のとおりです。
- 仏壇じまい専門の業者へ引き取り依頼
- 粗大ごみで出す場合でも、事前に供養は必須
- お寺によっては仏壇の引き取りを対応している場合あり
処分前に閉眼供養が済んでいないと、トラブルに発展する可能性が高くなるので、注意が必要です。
位牌とは
「位牌(いはい)」は、故人の戒名や法名、没年月日などを記し、霊を祀るための木製の牌(札)です。
仏壇の中段または上段に安置されており、故人を供養する中心的な存在とされています。
位牌には白木位牌や回出位牌など、さまざまな種類があり、種類によって供養方法が異なる場合もあるので注意が必要です。
位牌・仏壇の処分方法とは
位牌・仏壇の処分方法は複数あり、それぞれの方法によって費用や特徴が異なります。
ここでは、位牌・仏壇の処分方法を4つ解説します。
処分の依頼先によってメリットや注意点が異なるので、自分のニーズに合った処分方法を選択することが大切です。
菩提寺
一般的な方法として、閉眼供養を依頼した菩提寺やお寺にそのまま処分も依頼する方法があります。
菩提寺に処分を依頼すれば、永代供養に切り替えることも可能であるため、位牌やご遺骨をお寺に管理してもらいたい人は検討することも視野に入れましょう。
供養方法によって必要な金額が異なるので、別の供養方法に切り替えたい場合は、供養方法ごとの相場費用を調べて、あらかじめ必要な金額を把握しておくとよいでしょう。
仏具店
古い位牌や仏壇を処分して、新しい位牌や仏壇を購入することを考えている人は、仏具店で処分する方法も有効です。
新しい位牌・仏壇を購入する場合は、お得な料金で処分してもらえる可能性が高いうえ、位牌・仏壇の扱いも慣れているので、安心して任せられるでしょう。
ただし、閉眼供養には対応できないため注意が必要です。
専門業者
墓じまいや位牌・仏壇の処分を主なサービスとしている、専門業者も複数あるため、菩提寺とのお付き合いがあまりない人は、利用することをおすすめします。
業者によっては閉眼供養にも対応してくれるケースがあるため、自分のニーズに合った業者を選ぶとよいでしょう。
ただし、リサイクル事業を中心に実施している業者だと、閉眼供養に対応していない可能性が高いので注意が必要です。
粗大ゴミに出す
閉眼供養を実施していれば、家具と同様に粗大ごみとして処分できます。
ただし、ゴミ捨て場に仏壇を置くことに抵抗がある人も珍しくありません。
ゴミ捨て場に仏壇を置きたくないと考えている人は、ゴミ処理施設に直接持ち込むか、専門業者に依頼するとよいでしょう。
位牌を処分するタイミング
位牌を処分するタイミングは、位牌の種類やシチュエーションによって異なります。
そのため、位牌の種類を正確に見極めて、適切なタイミングで処分することが大切です。
ここでは、位牌を種類やシチュエーションごとに分けて、処分する適切なタイミングを解説します。
白木位牌の場合
「白木位牌(しらきいはい)」は、故人が亡くなった直後から四十九日法要までの間に使用される仮の位牌です。
あくまでも「仮の位牌」であるため、本来の位牌(本位牌)ができるまでのつなぎとして使用されます。
四十九日をもって役割を終えた際には、閉眼供養を実施し、処分または寺院で供養するとよいでしょう。
夫婦位牌に変更する場合
「夫婦位牌(ふうふいはい)」は、夫婦二人の戒名や俗名などを一つの位牌に連名で記した位牌です。
主に本位牌として使用され、「夫婦の霊を一体として供養する」という意味合いを持ちます。
1人用の位牌から夫婦位牌に変更する場合、元使っていた位牌を閉眼供養し、連名の位牌に作り変える場合が多いです。
四十九日法要のタイミングで変更する傾向があります。
繰出位牌に変更する場合
「繰出位牌(くりだしいはい)」は、複数人分の戒名を1つの位牌にまとめて祀る形式の位牌です。
内部に複数の札板(戒名を記す板)を収納できる構造になっており、家系・家族・先祖代々の霊を一括して供養する目的で使用されます。
位牌が多くなってきた場合に使用されるケースが多く、元使っていた位牌を閉眼供養してから繰出位牌に変更します。
過去帳に変更する場合
「過去帳(かこちょう)」は、家族や先祖の亡くなった方々の戒名、俗名、没年月日、享年などを記録した帳面です。
位牌と同様に故人を供養するための大切な道具で、仏壇に安置されます。
繰出位牌と同様に位牌が多くなってきた場合に使用されるケースが多く、元使っていた位牌を閉眼供養してから過去帳に変更します。
傷ができた、壊れた場合
傷ができた、壊れた場合など経年劣化によって位牌が傷んでしまった場合も、処分するタイミングになります。
新しい位牌を用意し、古い位牌を閉眼供養することで、古い位牌を処分できます。
新しい位牌に買い替えた場合は、仏具店が回収してくれるケースが多いため、古い位牌を回収できるかどうか問い合わせてみるとよいでしょう。
仏壇じまいをしても位牌を保管できるの?
仏壇じまいする人の中には「位牌は処分しないで手元に残しておきたい」と考えている人も少なくありません。
仏壇じまいと位牌の保管を両立する方法は複数あり、親族の意向や故人との向き合い方によって使い分けることが重要です。
ここでは、仏壇じまい後に位牌を保管する方法を2つ解説します。
位牌の保管方法に困っている人は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
厨子に保管する
「厨子(ずし)」は、仏像や位牌、過去帳などを安置・保護するための小さな仏壇型の箱や戸棚のことです。
一般家庭や寺院の仏壇の中、または別置きで使われることがあり、特に格式や厳粛さが求められる対象物を安置する際に用いられます。
厨子を使用すれば、仏壇がなくても位牌を安置できるため、「仏壇を置くスペースはないけど、位牌を故人の魂が眠る場所として、家に置いておきたい」という人におすすめです。
閉眼供養をして保管する
供養する目的でなく、メモリアル目的として保管したい場合、閉眼供養することでただの遺品として保管できます。
保管する際には清潔な白い布や白い紙に包んで、しかるべき場所に保管してください。
もし不要になった際には、焼却(お焚きあげ)をして処分することをおすすめします。
仏壇じまいや位牌・仏壇を処分する注意点とは
仏壇じまいや位牌・仏壇の処分はデリケートな作業であり、いくつかの注意点があります。
そのため、注意点を事前に把握しておくことで、故人の供養を適切に実施しつつも、スムーズに仏壇じまいを進行可能です。
ここでは、仏壇じまいや位牌・仏壇を処分する際に意識したい注意点を3つ解説します。
以下の注意点を意識しつつ、敬意をもって仏壇じまいや位牌・仏壇の処分を進めるとよいでしょう。
丁寧に扱う
仏壇じまいや位牌・仏壇を処分する際は、「丁寧に扱う」ことが大切です。
仏壇や位牌は単なる物ではなく、ご先祖様の魂が宿るとされる神聖な存在です。
乱雑に扱ったり、無断で廃棄すると、家族間のトラブルや精神的な後悔につながることもあります。
閉眼供養などを通じて感謝の気持ちを込め、最後まで敬意を持って取り扱うことが、供養としてふさわしい対応です。
遺影と掛け軸も供養する
仏壇じまいや位牌・仏壇の処分時には、遺影や掛け軸も忘れずに供養することが重要です。
遺影や掛け軸は、長年にわたり故人や仏様を祀ってきた大切な存在であり、単なる物ではなく心の拠り所でもあります。
そのため、閉眼供養と同様に感謝を込めてお寺や供養業者に依頼し、丁寧にお焚き上げなどで処分するのが望ましいでしょう。
仏壇の中身をチェックする
仏壇じまいの際は、処分前に仏壇の中身をしっかり確認することが大切です。
引き出しや扉の奥に、数珠・遺品・古い手紙・写真など思い出深い品が残っていることがあります。
また、宗教的に重要な物や家族にとって大切な物が紛れている場合もあるため、不用意に捨てないよう注意が必要です。
【まとめ】手順をきちんと確認して仏壇じまいを実行しよう
本記事では、仏壇じまいをするうえで知っておきたい、位牌・仏壇の処分方法や閉眼供養に関する情報を解説しました。
仏壇や位牌は、故人にまつわる神聖なものであるため、適切な手順で丁寧に対処することが大切です。
もし、仏壇じまいに関するお悩みを抱えている人は、豊富な実績がある「わたしたちの墓じまい」に相談してみてはいかがでしょうか。